飲食店等を経営している場合、従業員に対して"タダ"で賄いを提供していませんか?
従業員に賄いなどの食事を提供したり、昼食を会社が用意している場合は、その取り扱いには注意が必要です!
従業員に対する賄いや昼食の支給は「給与」として扱われる可能性があるので、運用にあたっては慎重に考えないといけません。
しかし、一定の条件を満たしていれば、「給与」ではなく「福利厚生費」として非課税で経費にすることができます!
1. 賄いや昼食等を支給するケースとは?
飲食店や宿泊施設を運営していると、従業員に対して、お店の余った材料等で食事を提供するケースがあります。
また、会社の福利厚生の一環として、会社が昼食や夜食を用意して支給してくれることもあるでしょう。
従業員に少しでも良い環境で働いてもらうために良かれと思って会社が負担していたとしても、税務上はNGなこともあります。
一般的に、食事代は従業員が自分で負担すべきものとされているので、これらを"タダ"で支給している場合には、取り扱いに注意が必要です。
2. "タダ"だと「給与」扱いされる可能性がある
賄い等を"タダ"で支給した場合には「給与」として扱われる可能性があり、それは「現物給与」に該当するためです。
①現物給与とは?
給与は通常は金銭で支給されますが、「現物給与」とは従業員に金銭ではなく、物品やサービスなど金銭以外の形で支払われる給与のことを指します。
従業員に対し、無償又は著しく低い価額で物品やサービスが提供された場合には、この現物給与に該当することになります。
従業員は現物給与により経済的な利益を受けているので、原則として、その利益を受けたとされる金額が給与収入として扱われます。もちろん、所得税も住民税も課税されます。
②現物給与の具体例
代表的な具体例として、以下のようなものを無償又は著しく低い価額で従業員に提供した場合が該当します。
・食事代(賄い含む)
・通勤交通費
・商品券などの金券
・自社の商品や製品
・社宅や寮
・社員旅行の費用
・福利厚生施設の利用
・個人的な債務の免除または負担
・その他
これらに該当しても、一定金額の範囲内であったり一定の条件を満たしていれば、給与課税はされずに「福利厚生費」として非課税で経費に計上することが認められています。
3. 賄いが非課税になる条件
従業員に対する賄い等の食事の支給は、以下の2つの要件をいずれも満たしていれば、給与としては課税されません。
(1)従業員が食事の価額の半分以上を負担していること
(2)会社負担の金額が1か月当たり3,500円(税抜)以下であること
これらに該当しない場合は会社負担分が給与として課税されることになります。
①従業員が食事の価額の半分以上を負担していること
まず1つ目として、従業員が食事の金額の半分以上を負担している必要があります。
弁当などを直接支給している場合はその購入金額、賄いなどで自らが調理した食事の場合は、その材料費や調味料など調理に直接かかった費用の合計額の半分以上になります。
②会社負担の金額が1か月当たり3,500円(税抜)以下であること
2つ目に、食事の価額から従業員が負担している金額を差し引いた残りの金額(会社負担の金額)が、税抜で1か月3,500円以下である必要があります。
たとえ従業員が半分以上負担していたとしても、会社負担分が1か月で3,500円を超えてしまうとNGです。
③残業や宿日直をした場合の食事の支給
上記の要件に関係なく、残業や宿日直を行うときに支給する食事は、"タダ"で支給しても給与として課税しなくてもよいことになっています。
4. 給与課税のリスク
会社が全額を負担していた等により、その金額が従業員の給与とされてしまった場合、会社だけでなく従業員側にも追加の税金が発生するなど、様々なリスクがあります。
①従業員への課税
利益を受けたとされる金額が従業員の給与収入となるため、それには追加で所得税・住民税が課税されることになります。
差額分の税額は本来の納税よりも遅れての納税になるので、延滞税等が発生する可能性もあります。
②源泉徴収義務
本来であれば給与扱いになるので、その金額と通常の給与を合わせて源泉徴収が必要だったことになります。
源泉徴収税額が不足していることになるため、従業員から追加の徴収と、税務署への納付が必要となります。
もちろんこれにも延滞税や加算税が発生します。
③従業員からの不信感
事前の説明や合意がないと、従業員からすると想定外の給与収入となり税金も発生するため、なかなか納得してもらえないでしょう。
追加の課税や源泉徴収により、会社に対し相当な不信感を抱く可能性があります。
少しでも給与課税のリスクがある場合は、事前に説明して納得にしてもらうことが大切です。
5. 実務上の対策
賄い等の支給が給与課税されないための要件は分かりましたが、そのうえで、従業員にも納得してもらいながら食事代の一部を負担してもらう必要があります。
実務上の具体的な対策としては以下のようなものが挙げられます。
①給与から天引き
食事代の半分以上を従業員が負担し、かつ、会社負担が1月3,500円以下になるように、食事代の費用を給与から天引きします。
決められた範囲内で会社が半分負担すると説明があれば、従業員からの納得感も高いでしょう。
②合意の上で従業員負担分を給与に上乗せする(給与課税)
従業員に負担をさせたくないということであれば、従業員負担分を給与額面に上乗せすることにより実質的には全額を会社負担にすることができます。
この場合はその上乗せ分は通常の給与と同じ扱いになり税金や社会保険料がかかりますので、事前に詳しい説明が必要です。
従業員負担分を給与明細に「食事代」などと記載して額面に上乗せし、一番最後にその金額を天引きすれば実質的な従業員負担は0円になります。(実際には税金や社会保険料がかかります)
③回数制限を設ける
賄いや食事支給に回数制限を設けて運用する方法もあります。
無制限に認めて、給与課税にならないように天引き等で従業員に負担してもらうよりかは、事前に回数制限を設けて、その範囲内で利用をしてもらう方が、従業員の満足度も高いかもしれません。
給与課税にならない範囲で回数制限を設定しておけば、細かな金額の管理も不要になり、事務作業の手間も減るかもしれません。
6. まとめ
良かれと思って安易に賄いや食事を支給してしまうと、金額によっては様々なリスクが控えています。従業員に納得してもらうためにも、まずは会社側が税務上の取り扱いを理解することが必至です。
賄い等の運用や取り扱いに少しでも悩んだら、まずは税理士に相談しましょう!
ご相談の方は以下よりお問い合わせください。
初回は相談無料となります。
※上記記事は令和6年7月時点の情報に基づいて記載しております。
※上記記事は一般的な内容を記載しているため判断の際は専門家へのご相談をお願い致します。
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