倒産防止共済(経営セーフティ共済)への加入を検討されている方、既に加入している方も多いと思いますが、経理処理について考えたことはありますか?掛金を「保険料」などで経費に計上していませんか?掛金は資産に計上する方法もあり、その方がメリットが大きいかもしれません。倒産防止共済の概要や経理処理について解説します!
1. 倒産防止共済とは?
倒産防止共済(正式名称:中小企業倒産防止共済制度)は、中小企業が倒産のリスクに備えるための公的な共済制度です。中小企業基盤整備機構が運営しており、加入者が共済金を積み立てることで、取引先の倒産時に資金繰りを支えると共に、連鎖倒産を防ぐことを目的としています。
2. 倒産防止共済の仕組み
①加入条件
倒産防止共済には、中小企業および個人事業主が加入でき、以下の要件を満たす必要があります。
・中小企業であること(資本金や従業員数が一定基準内であること)
・過去1年以上、事業を継続していること
②掛金
加入者は毎月掛金を積み立てることになります。掛金は月額5,000円~200,000円まで選択でき、自由に設定が可能です。掛金の総額が800万円に達するまで積み立てが行われます。
③共済金の貸付
取引先が倒産し、売掛金の回収が困難になった場合等、加入者は積立金の10倍までの共済金を無利子で借りることができます。これにより、急な資金不足に対応することができます。
④税制上の優遇
倒産防止共済の掛金は、全額が損金(法人)または必要経費(個人事業主)として計上できるため、税制上の優遇を受けることができます。
⑤加入手続き
倒産防止共済への加入は、全国の商工会議所や中小企業団体、金融機関を通じて申し込むことができます。
3. 倒産防止共済のメリット
①資金繰りの安定化
倒産防止共済に加入している企業は、取引先が倒産した場合に積み立てた掛金の10倍まで、最高8,000万円の貸付金を受けることができます。この資金を利用することで、急な取引先の倒産による資金繰りの問題を一時的に緩和できます。
②税制上の優遇措置
掛金は全額が損金(経費)として算入できるため、節税効果があります。毎月の掛金は5,000円から200,000円の間で、会社の利益状況に応じて調整可能です。
③計画的な資金積立
毎月一定額を積み立てることで、計画的に資金を蓄積することができ、将来の不測の事態に備えることができます。
④掛金の返戻金
掛金を40ヶ月以上積み立てると、解約時に掛金の100%が返戻金として戻ってくるので、実質的なリスクが低いと言えます。
※注意点
共済金の貸付を受けるには、加入後6ヶ月以上の積立が必要です。解約時に掛金の全額の戻り金を受け取るためには、加入期間が40ヶ月以上であることが条件です。それ未満の場合は一部のみが返還されます。
4. 掛金は経費計上?資産計上?
倒産防止共済の掛金は換金性が高いため、資産計上することも認められています(法人に限る)。ここでは具体的な処理方法を解説します。また、資産計上した時はどうやって損金として扱うのでしょうか?
①法人の場合
法人の場合は以下の2パターンの処理があり、いずれも添付書類が必要となります。
(1)経費計上するパターン
掛金を「保険料」などで経費に計上します。
保険料 200,000円 / 普通預金 200,000円
保険料は通常「販売費及び一般管理費」の区分として処理されるのが一般的です。
(2)資産計上するパターン
掛金を「保険積立金」などで資産に計上します。
保険積立金 200,000円 / 普通預金 200,000円
保険積立金は通常「投資その他の資産」の区分として処理されるのが一般的です。この掛金を損金に算入するために、損金算入による税務調整(課税所得の減算)が必要となります。申告書上で掛金分の課税所得を減算させることにより、経費計上でなくても損金とすることができます。
(3)添付書類
経費計上でも資産計上でも、下記の書類に必要事項を記入して申告書に添付する必要があります。
・「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」
・「適用額明細書」
②個人事業の場合
掛金を「保険料」などで経費に計上する処理のみとなります。
保険料 200,000円 / 普通預金 200,000円
個人事業の場合は法人のような税務調整がないことから、掛金を必要経費としたい場合は、資産計上せずに最初から費用に計上する必要があります。
また、申告書に以下の書類を添付する必要があります。
・「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」
5. 資産計上がおすすめ!
法人の場合はいずれの処理方法も認められていますが、資産計上の方が下記の様なメリットがあると考えられます。
①決算書上の利益に影響が出ない
掛金を経費計上した場合、一般的には「販売費及び一般管理費」となり、決算書の営業利益もそのまま減少した状態の数字となります。一方、資産計上した場合は掛金が「投資その他の資産」として資産になるのに加え、営業利益は減少せずに決算書の見栄えも保つことができます。金融機関等の利害関係者に決算書を提出する機会が多い企業にとっては、少しでも評価を良くするため、融資を引っ張りやすくするためにも、決算書の見栄えは良いに越したことはありません。
②掛金の積立総額が一目で分かる
掛金を経費計上した場合、そのまま経費となるだけなので、一目で掛金の総額を把握することが難しいです。一方、資産計上した場合は「保険積立金」として掛金が資産科目に溜まっていくので、一目で掛金総額が把握できます。倒産防止共済は掛金総額が800万円で満額となってしまうので、あといくら積み立てられるのかを常に意識することができるのは非常に大切です。
6. こんな税理士には注意が必要!?
倒産防止共済を始めたものの、担当税理士が何の相談もなしに、勝手に経費に計上しているということはないですか?処理として間違いではないですが、もしかしたら資産計上していた方が融資を有利に進められたかもしれない...ということもあるかもしれません。些細なことかもしれませんが、経営判断の材料として重要なことです。また、申告書に必要書類を添付する必要がありますが、意外とこの必要書類の添付を忘れているケースもあります。その場合は損金(必要経費)として認められません。きちんと倒産防止共済について理解していて、どのような処理にするか相談・説明してくれる税理士を探しましょう。
7. まとめ
倒産防止共済は、中小企業や個人事業主が、資金繰りの安定化、無利子貸付、税制上の優遇といった多くのメリットを享受することができる強力なツールです。適切な会計処理についても理解し、損のないようにより良い会社経営を目指しましょう。
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※上記記事は令和6年5月時点の情報に基づいて記載しております。
※上記記事は一般的な内容を記載しているため判断の際は専門家へのご相談をお願い致します。
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