従業員や取引先に対し、祝儀や香典などの金銭を渡すケースは良くあると思います。
もちろん、会社に関する支出の為、経費にしたいところですが、そもそも経費にできるのでしょうか?領収書もないしどうしたら良いのでしょうか?
これらの慶弔費の取り扱いや注意点について税理士が解説します!
1. 慶弔費は経費になる?
結論、祝儀や香典などの慶弔費は経費になります。
さらに、それに伴う交通費も経費にすることが可能です。
ただし、渡す相手によって勘定科目が変わったり、経費に計上するための注意点があるので気を付けなければなりません。
そもそも、渡す相手が会社と関係のある個人や企業というのが前提で、自社と関係のない個人的な友人や親族への慶弔費は経費にすることはできません。
2. 経費に計上するための注意点
基本的に支払い額を経費に計上することが可能ですが、いくつかの注意点をクリアしている必要があります。
①自社と関係のある個人や企業であること
大前提として、渡す相手が自社と関係のある個人や企業であることが必要です。
具体的には、自社の従業員、取引先の担当者や社長、その親族などが該当します。
個人な友人や知人であっても、ビジネス上で関係があるのであれば、経費として認められるでしょう。
②社会通念上一般的な金額の範囲内であること
明らかに常識の範囲外の高額な慶弔費は経費と認められない可能性が高いです。
明確な上限金額が定められいる訳ではありませんが、「社会通念上一般的」である必要があります。
立場や関係性によって金額は変わりますが、一般的な相場としては、祝儀が30,000~100,000円程度、香典が5,000~100,000円程度と言われています。
これを大きく超える金額は認められない可能性があるので注意しましょう。
また、これは交通費も同じ考え方で、必要以上にタクシーを利用したり高級ホテルに宿泊したりするとNGです。
③領収書の代わりにメモと案内状を残しておく
通常の経費であれば領収書の保管が必要ですが、慶弔費の場合は領収書が出ません。
その場合は、出金伝票等に「日付」「相手方」「金額」「内容」を記載して保管しておきましょう。
また、それと一緒に結婚式や葬式等の案内状を保管しておきましょう。
これらの2つがないと、実際に式に行ったのか?本当にこの金額を渡したのか?を客観的に証明することができないため、必ずセットで残しておく必要があります。
案内状がない場合などは、渡す前の祝儀袋や香典袋のコピーを取っておくのも良いでしょう。
④事前に慶弔費の支給規定を定めておく
従業員や役員への慶弔費が経費として認められる前提として「お祝いやご不幸などに際して一定の基準に従って支給される金品に要する費用」は福利厚生費として差し支えないと国税庁が発表しています。
この「一定の基準」をクリアするために、事前に就業規則等で慶弔費の支給規定を定めておきましょう。
ただし、この場合は、全社員を対象とし規定通りに必ず支給する必要があるので注意が必要です。
3. 勘定科目は?
渡す相手によって勘定科目を使い分ける必要があります。
自社の社内の人間に対しては「福利厚生費」社外の人に対しては「交際費」を使用します。
例:従業員の結婚式に参加し祝儀として30,000円を渡した
福利厚生費 30,000円 / 現金 30,000円
役員の親族が亡くなったため、50,000円の香典を渡した
福利厚生費 50,000円 / 現金 50,000円
取引先の社長の結婚式に参加し祝儀として70,000円を渡した
交際費 70,000円 / 現金 70,000円
4. 出産祝い金や誕生日の祝い金は?
似たようなものとして、従業員に出産祝い金を渡したり、誕生日に金品を渡す場合も考えられます。
このような場合も同じ考え方になるのでしょうか?
①出産祝い金は福利厚生費でOK
従業員への出産祝い金も祝儀や香典と同様で、「お祝いやご不幸などに際して一定の基準に従って支給される金品に要する費用」は、福利厚生費として経費計上しても問題ないとされています。
これは出産祝い金の他にも、入院した時の見舞い金や新築祝い金なども該当します。
②誕生日祝い金はNG
残念ながら、誕生日に金銭を渡す場合は上記に該当せず、その金額が「給与」として課税されてしまいます。
これは、誕生日に"金銭"を渡すという行為は広く一般的に行われている慣習とは言い難く、毎年継続的にやってくるものの為、他の祝い金とは区別して「給与」とするとされています。
5. 高額な場合は税務上どうなる?
もし仮に、社会通念上一般的な金額の範囲を超え高額な祝儀や香典を渡した場合、税務上の取り扱いはどうなるのでしょうか?
①交際費の場合
例:取引先の担当者の結婚式で祝儀として500,000円を渡した(調査で400,000円を否認)
交際費 500,000円 / 現金 500,000円
高額と認められる400,000円は損金不算入となるため、400,000円は申告書の別表で損金不算入等の処理をすることになります。
会計上は経費になっていますが、税金計算上は損金として認められません。
②給与の場合
例:従業員の出産祝いとして300,000円を渡した(調査で不相当に高額と判断)
給与 300,000円 / 現金 300,000円
ここで注意が必要なのが、従業員や役員への慶弔費が高額と判断された場合、高額とされる部分が給与となるのではなく、支払った"全額"が給与となる点に注意してください。
全額が損金には算入されますが、全額が受け取った従業員の所得税・住民税の対象になります。
③役員賞与の場合
例:役員の親族の香典として500,000円を渡した(調査で不相当に高額と判断)
役員賞与 500,000円 / 現金 500,000円
相手が役員の場合は、高額と判断されたら"役員賞与"として扱われます。
役員賞与は事前に届出書を提出していないと損金算入が認められない為、法人の経費にできない上に、その役員に所得税・住民税が課されるため、ダブルパンチです。
役員の場合は特に注意しましょう。
6. まとめ
一般的な金額であれば問題なく経費にできますが、きちんと証拠を残しておくことが大切です。
仮にどうしても高額にせざるを得ない状況の時は、その時のリスクを理解しておきましょう。
少しでも不安な場合は、まずは近くの税理士に相談しましょう!
ご相談の方は以下よりお問い合わせください。
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※上記記事は令和6年9月時点の情報に基づいて記載しております。
※上記記事は一般的な内容を記載しているため判断の際は専門家へのご相談をお願い致します。
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