従業員へ決算賞与の支給を考えている場合、その賞与を決算で未払計上できるのか?気になるところです。正しく損金に算入するためには、税務上の取り扱いを正しく理解する必要があります。
決算賞与と通常の賞与との違い、支給時期、損金算入時期など、実務上の注意点も踏まえて税理士が解説します!
1. 決算賞与とは?
決算賞与とは、会社が決算時に従業員に対して支給する"特別"な賞与のことを言います。
夏や冬に支給される通常の賞与とは異なり、決算期の業績に応じて支給されるため、経営状況によって金額が変わるのが大きい特徴です。
従業員に利益を還元するという意味合いでもあるため、"臨時的"な賞与という位置づけになり、支給の有無や金額は期ごとに会社の裁量によって決まります。
従業員のモチベーションアップにも繋がり、かつ、業績によって金額を変動することができるため、節税対策としても活用されることが多いです。
ただし、決算賞与をその事業年度の損金に算入するには、税務上の取扱いについて正確な理解が必要です。
2. 決算賞与はいつ経費にできるの?
賞与は通常、その支払いをした日の事業年度の損金に算入されます。
ですが、決算賞与の場合、どうしても決算後の支給になってしまうことも多いと思います。
その場合、一定の要件を満たしていれば、決算後の支給であってもその事業年度の損金に左入することが可能です。
つまり、決算で"決算賞与の未払計上"が可能ということになります。
要件は以下の3つです。
①支給額を同時期に支給される全ての従業員に各人別に通知していること
その事業年度内に、支給予定の全ての従業員に個別に支給額を通知している必要があります。
かつ、その通知をした従業員全員に通知をした金額通りに支給をしないといけません。
金額を変更した場合は未払計上が認められませんし、通知をしたのに支給をしなかった人がいたらアウトです。
具体的には、事業年度末時点では在籍していた人が支給前に退職してしまった場合などで、その退職者に支給をしなかった又は減額をした場合は完全にアウトです。
②事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること
通知をした金額を通知をした全ての従業員に、決算から1か月以内に支払っている必要があります。
3月決算の会社であれば、4月末までに決算賞与を支給する必要があります。
もちろん、決算直前の3月末に前もって支給してしまっても全く問題ありません。その場合は、支給日にそのまま支給額を損金に算入することができます。
③通知をした事業年度において損金経理をしていること
通知をした事業年度で、決算賞与を損金として未払計上して決算申告をする必要があります。
例:3月30日に対象者10名にそれぞれ10万円の決算賞与を4月10日に支給することを通知した
決算賞与 1,000,000円 / 未払金 1,000,000円
更正の請求や修正申告で遡って損金に算入することはできません。
3. 役員への決算賞与も認めらる?
役員への決算賞与は、「事前確定届出給与に関する届出書」を事前に税務署に提出していない限り、損金への算入は認められません。
詳しくはこちらの役員賞与についての記事をご覧ください↓
通常の役員賞与であれば、届出書を事前に提出しておくことで損金算入できますが、臨時的な賞与である決算賞与については、現実的に事前に届出書を提出することは難しいので、一般の従業員のみが対象となることに注意しましょう。
4. 決算賞与の実務上の注意点
決算賞与をその事業年度の損金に算入するためにも、税務調査で否認されないためにも、以下の事項について注意しながら運用しましょう。
①支給対象者は給与規定や就業規則で明記しておく
支給対象者は会社の裁量によって独自に定めることができます。
例えば、決算期間中に「一定の勤務日数を満たした人」「一定の業績や目標を達成した人」「一定の評価を受けた人」などの様に基準を設けることができます。
誰が支給対象者なのかを明確にしておくことにより、税務調査の際も、支給対象者を客観的に根拠をもって説明することができます。
②通知は書面で行う
決算賞与の未払計上の要件として、「支給額を同時期に支給される全ての従業員に各人別に通知していること」とありますが、この通知方法は特に定められている訳ではありません。
ですが、さすがに"口頭"での通知は証拠としては弱すぎます。
税務調査の際にスムーズに認めてもらう為にも、事業年度内に通知をしたことを"書面"により残しておきましょう。
具体的には、決算賞与の通知書を2部作成しておき、1部を通知をした各従業員に渡し、もう1部は従業員からサインをもらい保管しておくと良いでしょう。
③親族や特殊関係者への決算賞与は注意
"役員"ではなくても、社長の親族や会社と特殊な関係にある個人へ支給する決算賞与は注意が必要です。
親族や特殊関係者への賞与は一般の従業員と同様に損金算入が認められますが、恣意的に高額にすることも可能な為、税務調査でも目を付けられやすいポイントです。
親族や特殊関係者にも決算賞与を支給する場合は、他の従業員と同様の計算方法で合理的な金額にしないと、損金算入が認められない可能性があるので注意しましょう。
なお、その実態からみて"みなし役員"とされてしまった場合には、そもそも賞与の損金算入
が認められないので、みなし役員に該当する可能性がある場合は賞与の支給を控えることも考えましょう。
5. まとめ
決算賞与はうまく活用すれば、従業員のモチベーションUPや節税にも繋がる魅力的なものです。
決算で損金に算入するためにはいくつか決められたルールがあるので、きちんとルール通りに運用していることを証明できるようにしておくことが大切です。
税務上の取り扱いを正確に把握して上手に活用できるようにしましょう。
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※上記記事は令和6年9月時点の情報に基づいて記載しております。
※上記記事は一般的な内容を記載しているため判断の際は専門家へのご相談をお願い致します。
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