結論、会社が負担した従業員の健康診断費用を経費にすることは可能です。
ただし、「福利厚生費」として経費に計上するためにはいくつかの要件を満たしている必要があります。
要件を満たさない場合は「給与」となってしまう可能性があるため注意が必要です。
その理由や実務上の注意点等を税理士が詳しく解説します!
1. 健康診断費用は経費になるのか?
結論、健康診断費用は経費にはなります。
原則、会社が負担した健康診断費用は、従業員等に対する経済的利益の提供にあたるため、「給与」に該当します。
ただし、3つの要件を満たしていれば、給与ではなく「福利厚生費」としての経費計上が認められています。
すなわち、要件を満たさない場合は「給与」として扱われてしまいますので注意が必要です。
なぜ「給与」になってしまうのかは、こちらの記事でも似たような取り扱いについて解説していますので是非参考にしてみてくだい。
どちらも経費であることに変わりはないですが、せっかく会社が負担してあげた費用が「給与」となってしまっては、そこに無駄な税金が発生してしまいます。
さらにそれが役員である場合は、その給与とされた金額は損金に算入するこができないため、さらに無駄な税金が発生してしまいます。
2. 福利厚生費にできる3つの要件
福利厚生費とするためには、以下の3つの要件を満たしている必要があります。
①対象者全員に対して実施すること
正社員だけでなく、一定時間以上働くパート・アルバイト等も対象者に含まれます。
受診者に差が出ないように、健康診断が必要な対象者が全員一律に実施している必要があります。
例えば、「特定の従業員だけ」「役員だけ」「役員だけ高額な検査がある」などはこの要件から外れてしまいますので、その分が給与課税されてしまいます。
ただし、公平性が保たれていれば、「〇〇歳以上」などのように年齢で区切って実施することは問題ないとされています。
この場合もその年齢以上の対象者は全員実施している必要がありますので注意してください。
②費用全額を会社が医療機関へ直接支払っていること
健康診断費用の支払いは、会社がまとめて医療機関へ直接支払う必要があります。
受診する従業員がそれぞれ立て替えて後で精算する方法などは認められません。
どうしても難しい場合は、医療機関に会社宛の領収書を発行してもらいましょう。
③社会通念上一般的な金額の範囲内であること
一般的な健康診断費用の相場は10,000円前後が多いです。
これよりも著しく高額な費用は給与とされてしまう可能性があります。
例えば、一人当たり十数万円するような高額な健康診断は難しいと考えておきましょう。
3. 役員だけが受診してしまったら?
他の従業員がいる場合と役員しかいない会社とで少し考え方変わります。
①対象者が他にもいる場合
他の従業員(対象者)がいるにもかかわらず、役員だけが健康診断を受診した場合には、上記①の要件に該当しなくなるため、「給与」として課税されます。
そして、役員の場合はただの給与ではなく、「役員賞与」としての取り扱いになります。
役員賞与の場合は、事前に届出書を提出していないと損金に算入できないため、法人の経費にできない&役員賞与に対して税金が発生するため、会社にとっても役員にとっても大きなダメージです。
そうならない為にも要件をしっかりと守りましょう。
②役員しかいない会社の場合
そもそも役員しかいない場合には、将来的に従業員を雇用することを想定して、就業規則等を整備して、それに沿って役員が健康診断を受診していれば問題ないでしょう。
従業員を雇用した後も対象者全員に対して実施できるように整備しておく必要があります。
4. 人間ドックの費用は?
人間ドックの費用についても、上記3つの要件を満たしていれば、福利厚生費としての経費計上が認められています。
この場合も、年齢制限を設けて、一定年齢以上の人は人間ドックを受診するような運用でも問題ありません。
金額は通常の健康診断よりは高額になりますが、人間ドックの一般的な相場であれば問題なく、一般的な2日間の人間ドックであれば給与課税の必要はないと国税庁も回答しています。
5. 実務的な対応方法
それでは、上記を踏まえて、実務的にはどのような対応・運用をするのが良いでしょうか。
①就業規則で健康診断について規定する
健康診断の対象者、受診時期、受診内容、年齢による受診内容、費用の負担者など、規定により明確にしておきましょう。
その規定に沿って健康診断を実施していれば、税務調査があってもその事実を客観的に証明しやすいです。
何も規定がなければ、客観的な証明が難しく、場合によっては認められないリスクがあります。
②会社が医療機関を指定して手配までする
要件②にある通り、費用全額を会社が医療機関へ直接支払っている必要があります。
従業員ごとに医療機関が違ったりすると、その支払い等も手間がかかり管理も複雑になるため、会社側で一律に医療機関と診断内容を指定して、会社側でその手配・支払いまで済ませましょう。
後は従業員には現地に行ってもらうだけです。
③健康診断を拒否した従業員の記録を残す
自らの意思で健康診断を拒否する従業員もいるかもしれません。
その場合は、本人の意思で健康診断を拒否した旨を書面で残しておきましょう。
会社側が受診をさせなかったと見られてしまうと都合が悪いです。
証拠として、健康診断を希望しない旨等を記した書面を従業員から貰うようにしましょう。
6. まとめ
健康診断の費用は一般的なものであれば基本的には問題なく福利厚生費として経費計上が可能です。
ただし、特定の従業員等だけを対象にしたり、著しく高額な場合は給与課税される可能性があるので注意が必要です。
少しでも不安な場合は、まずは税理士にご相談ください!
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※上記記事は令和6年9月時点の情報に基づいて記載しております。
※上記記事は一般的な内容を記載しているため判断の際は専門家へのご相談をお願い致します。
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