個人事業主が法人を設立する際に検討すべきことは?法人成りのメリットデメリットを税理士が解説!
- hsatou0
- 3月28日
- 読了時間: 8分
更新日:7 日前
個人事業主として経営が安定してきたり売上が伸びてきた時に、「法人成りした方が良いのか?」と悩む人が多いと思います。
「法人成りした方が税金や安くなるって聞くけど...具体的にどのくらい税金が変わって、どんなメリットがあるのか分からない」というご相談も多いです。
結論、法人成りすべきかどうかは、その時の利益状況と経営者の考え方次第になるので、メリットデメリットを踏まえて総合的に判断する必要があります。
具体的な金額を用いながら、メリットデメリットも交えて説明していきます!
目次
1. 法人成りのメリット
2. 法人成りのデメリット
3. 具体的なシミュレーション
4. 法人成りのご相談は税理士に
1.法人成りのメリット

まず最初に法人成りのメリットをざっと解説します。
詳しくは後半で具体的な金額を用いながら説明します。
そもそもなぜ法人成りを検討する必要があるかというと、これらのメリットを受けることにより、事業をより成長させたい、手元に残るお金を増やしたいというのが多くの理由になります。
なお、以下のメリット(デメリット)は全て可能性の話なので、必ずそうなるという訳ではありませんのでご注意ください。
①税負担が減る
個人の所得税は『超過累進課税』が採用されていて、所得が増えるにつれ、その一定金額を超えた部分の税率が上がっていく仕組みになっています。
所得税と住民税を合わせた最高税率は55%(所得税45%、住民税10%)となっていて、所得によっては法人税の税率より高くなるケースが十分あり得ます。
仮に法人税の実効税率を約35%とした場合、この35%の法人税より、個人の所得税・住民税の方が高くなってしまうのであれば、法人成りにより税負担が減ることになります。
また、法人成りすると事業主は会社から給与(役員報酬)を貰う形となる為、個人と法人に所得が分散されることになります。
分散された給与には"給与所得控除"が適用される為、さらに所得税と住民税が低く抑えられます。
個人の事業所得として一か所に所得が集中するより、"給与"と"法人の利益"に分散することで税負担を減らすことができます。
②消費税の免税事業者になる
消費税の課税事業者になるかどうかは、基本、基準期間の課税売上が1,000万円を超えているかどうかで判定します。
基準期間の課税売上が1,000万円を超えている場合は、その事業年度から消費税の納税義務が発生します。
この「基準期間」というのは、簡単に言うと2期前の事業年度です。
新たに法人を設立した場合、2期前の事業年度は存在しないので、基準期間の課税売上は0円ということになります。
つまり、法人成りした場合は、最大で2年間、消費税の納税義務が免除される"免税事業者"となることができます。
個人事業と法人は税務上は別人格として扱われるので、個人事業の時の売上は判定上考える必要はありません。
なお、以下のような場合は免税事業者とならないので注意しましょう。
・インボイス登録をする
・資本金が1,000万円以上
・設立初年度の最初の半年で給与支払総額が1,000万円を超える
・親会社等の課税売上が5億円以上
③社会的な信用度が高まる
個人事業の場合は事業主本人の信用度が全てとなり、企業間との取引においても決して信用度が高いとは言えません。
特にBtoBのビジネスの場合は、そもそも法人でないと取引をしてくれないということもあり得ます。
こうした理由から、法人成りすることにより事業の幅が増え、事業の成長にもつながる可能性があります。
また、社会的信用度の向上により、採用にも有利に働くとも言えます。
④社会保険へ加入できる
個人事業主の場合は、事業主は基本的に国民年金と国民健康保険への加入になります。
法人成りした場合は、事業主は役員となり給与を貰う立場になるので、その給与から社会保険(健康保険・厚生年金)を支払うことになります。
老後の年金のことも考えて、社会保険には加入しておきたいとう声も多いです。
一方で、法人は原則的に社会保険への加入が義務付けられているので、これをデメリットと捉える方もいます。
⑤決算期を自由に設定できる
個人事業の決算期は必ず12月と決まっています。これは変更することはできません。
法人の場合は決算期を自由に設定できる為、「繁忙期である12月は避けたい」「年度に合わせて3月にしたい」など、柔軟に対応することが可能です。
⑥節税の幅が広がる
今回の説明では詳細は割愛しますが、主に以下の様なものが挙げられます。
詳しくは別記事で説明します。
・役員等への退職金の活用
・生命保険等の活用
・欠損金(赤字)の繰越
・社宅の活用
・出張旅費規程の活用
2.法人成りのデメリット

次に法人成りのデメリットを解説します。
メリットだけではなく、もちろんデメリットも存在します。
①設立費用がかかる
法人設立をするには登記費用や司法書士への報酬が発生します。
通常は司法書士に設立の依頼をするケースがほとんどなので、登録免許税や司法書士報酬を合計すると、25~30万円はかかると思っておいた方が良いでしょう。
なお、株式会社でなく合同会社の設立の場合は10~15万円程度となります。
②事務作業が煩雑化する
法人で事業を営む場合は、個人事業と同じ感覚でいてはいけません。
基本的には全ての契約を法人名義とする必要がありますし、決算書や申告書も比べ物にならないくらい複雑になります。
それに伴い、税理士に依頼する場合は報酬が上がることが一般的です。
また、会社のお金も社長が個人的に自由に使うことはできず、社長は自身の役員報酬の中で生活をしなくてはいけません。
会社の口座から勝手に引き出して私的に使っていたら、横領になる可能性もあります。
法人と個人は別人格なので、きちんと線引きをすることが大切です。
③社会保険への加入が義務
メリットでも解説しましたが、法人は原則的に社会保険への加入が義務になりますので、その負担の増加がデメリットになることもあります。
社会保険料は労使折半なので、会社が従業員の社会保険料の半分を負担しなくてはいけません。
個人事業では加入していなかった場合、急に負担が増えることになるので注意が必要です。
3.具体的なシミュレーション

個人事業としての所得が1,000万円の時の法人成り時の具体的なシミュレーションをしてみます。
なお、消費税は免税事業者で従業員はなし、役員は事業主1人で年間の役員報酬は600万円を貰うと仮定します。
①社会保険料の比較
個人事業のまま | 法人成り後 | |
国民健康保険 | 800,000円 | 0円 |
国民年金 | 204,000円 | 0円 |
事業主負担社会保険料 | 0円 | 906,900円 |
法人負担社会保険料 | 0円 | 928,500円 |
合計 | 1,004,000円 | 1,835,400円 |
保険料は概算での金額です。
個人事業の国保と国民年金の年額と、法人成り後の会社が負担する社会保険料と役員本人が負担する社会保険料の年額を比較します。
トータルの社会保険料は83万円ほど増加することになります。
②税金の比較
個人事業のまま | 法人成り後 | |
所得税・住民税・事業税 | 2,339,400円 | 199,100 |
法人税等 | 0円 | 763,800円 |
合計 | 2,339,400円 | 962,900円 |
税金は概算での金額です。
個人事業の時に発生する所得税、住民税、個人事業税の年額と、法人成り後の役員報酬に対する所得税、住民税と法人税等の年額を比較します。
トータルの税金は137万円ほど減少することになります。
法人成り後の役員報酬600万円には"給与所得控除"が適用され、所得税・住民税がかなり抑えられます。
あとは残った利益約300万円に対してのみ法人税が課されるので、個人の事業所得1,000万円よりはるかに税負担が抑えられます。
社会保険料と税金を合算すると、年間で約54万円の削減になることが分かりました。
ただ、これは前提条件によって大きく数字が変動するので注意が必要です。
③条件によってシミュレーションは大きく変わる
今回は所得1,000万円でのシミュレーションでしたが、この所得がもっと高くなればその差は大きくなっていき、法人成りのメリットはより大きくなっていきます。
逆に、所得が700万円や800万円の場合だと、社会保険料の負担増も加味するとトータルの削減はそこまでできないかもしれません。
ですが、税負担以外の部分でメリットを感じるものがあれば、法人成りを検討しても良いかもしれません。
④消費税の課税事業者だったら?
今回は免税事業者と仮定してシミュレーションしましたが、既に消費税の課税事業者または翌年から課税事業者になるという場合は、その削減額も考慮する必要があります。
法人成りすれば最大で2年間は免税事業者になることができるので、年間で数十万円から数百万円の削減をすることも可能です。
最大2年間という限定的ではありますが、それでも金額がかなり大きいので、事前に税理士に相談して検討しましょう。
ただし、法人成り後にインボイス登録をする場合は免税事業者になれないので注意しましょう。
4.法人成りのご相談は税理士に

前提条件によってシミュレーション結果は大きく異なるため、税理士と相談しながら検討することが大切です。
当社は、最適なシミュレーションを行って具体的な数字を見ながら、お客様のご意向や今後の状況も加味して法人成りのお手伝いをさせていただきます。
法人設立の際は提携の司法書士を紹介することも可能ですので、興味がある方は是非お気軽にお問い合わせください。
ご相談の方は以下よりお問い合わせください。
初回は相談無料となります。
※上記記事は令和7年3月時点の情報に基づいて記載しております。
※上記記事は一般的な内容を記載しているため判断の際は専門家へのご相談をお願い致します。
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